新作小説  「霧夜」

霧につつまれた夜、僕等は夜道を歩いていた。

沙菜(さな)が言う。

「私達の愛まで見えなくなりそう…」

女という生き物は勘がいい。

僕は別れ話をするつもりだった。


康太(こうた)は言う。

「俺達、終わりにしないか…」

「えっ? なんで?」

「…長く一緒に居すぎた…」

僕等は付き合って7年目を迎えていた。

「そんな…一方的に…康太、自分勝手だよ…」

「そうだな…」

「私、嫌だ…康太と別れたくない!」

「10年後、あの森林公園のベンチで会わないか?」

「言ってる意味が分からない…」

「10年後、まだ俺達の愛が終わってなかったら、リスタートしないか」

「10年も康太と会えないの?」

「俺は海外へ行く…10年間な…10年間、お互いの愛情が残っていたら、そこからはずっと一緒だ…」

「海外?」

「ああ」

「ビザの関係で帰国する事もあるけれど、沙菜には会わない…」

「・・・・・・」

「自分磨きをしたいんだ、海外で…。自分がどこまで出来るか試したいんだ」

「自分磨き・・・」

沙菜は霧で見えない月を見上げた。


「海外で事業を立ち上げたいんだ…成功する確率は低いがな…」

「そうなんだ…康太の夢、初めて聞いた…」

「リスクがあるから、お前を巻き込みたくない…」

「だから一時的なお別れ?」

「ああ…すまん…」

「…私、待ってる・・・ずっと待ってる・・・」

「沙菜・・・」

「だから今日は泣いていい? 抱きしめて…」

康太は沙菜を強く抱きしめキスをした・・・。